昔、くじらぐもにのりたかった

暮らしとインテリアと、時々雑談

バスって素敵

バスに乗るのが好きだと気づいたのは

この家に 引っ越してからだ。

 

以前は 都会暮らしで

自転車に ひょいとまたがれば 

最寄り駅はもちろん

クリーニング屋さん ケーキ屋さん 

フラワーショップに スーパーに 歯科医院…と

わけなくスイスイ どこにでも行けて 便利だった。

 

引っ越し先は 同じ市内だけれど、自然豊かな郊外の住宅地。

もとは丘陵地帯だったから、緩急さまざまな坂道が多い。

最寄り駅までは 自転車で頑張って20分くらい。

でも 正直 自転車で行ったことはない。

頑張らなくても バスがあるからだ。

 

5、6分も歩けば、始発のバス停がある。

混みもせず、安心して座っていられる。本数も多い。

終点の最寄り駅前まで およそ25分。

これを長いと思うか短いと思うかは

人それぞれだけど

私には ちょうどいい。

 

バスで本を読むと 酔ってしまう私は

大抵 車窓の外を眺めて過ごす。

 

あのお蕎麦屋さん 美味しいのかな?

木造の保育園 かわいいな

ここのおうち いつ見ても お庭がきれい

 

と 風景そのものを楽しむこともあれば

何とはなしに見ているようで 頭の中では

違うことを考えていたり 物思いに耽ったりすることもある。

 

そういうとき

他の乗客のおしゃべりや 運転手さんのマイクの声は

聞こえているけれど 心地よいざわめきに過ぎず

自分の座席が まるで 移動する思索のための空間として

用意されていたように感じる。

 

バスは その時々の自分と 向き合う場にもなる。

プチ家出した時は バスに乗ることで冷静になれた。

湧き上がるネガティブな感情が鎮まるのを

程よいスピードで たまに寄り道しながら バスは待ってくれた。

実際は いつもどおり 運行していただけなのだけど

そう思ってしまうくらい バスは優しかった。

 

息子の誕生日に ケーキを買いに行った時は

バスに揺られながら 生まれた日のことを思い起こした。

これまでの日々に感謝して 自分のこともちょっぴり褒めた。

 

 

或いはまた、乗ってくる人々を 気に留めるのもいい。

 

あのおじいさん 後ろ姿が父に似てる 

息子にも あれくらいの頃があったな 

と 家族の面影を重ねたり

 

お母さん ベビーカー大変ね

あばあちゃん ステップ気をつけて

と 心の中で 話しかけたりして過ごす。

 

 

ご乗車お疲れさまでした

終点です

 

「ありがとうございました」

運転手さんに声をかけて バスを降りながら思う。

 

袖擦り合うも他生の縁 というけれど

もしかしたら バスの中では 

こんな 見えない心の交流が 日々なされているのかな。

そうだったらいいな。

 

私にとってバスは 移動手段以上の存在で

この25分間は もしかしたら

立ち止まったり 前を向いたり 

リフレッシュしたりするためにあるんじゃないか

と思うほど。

 

だから私は 心の底から思うのだ。

バスが好き バスって素敵だな と。