昔、くじらぐもにのりたかった

暮らしとインテリアと、時々雑談

魔法よ、解けないで

最近、息子の様子がおかしい。

私と目が合うたび「お母さん、かわいいー!」と言うからだ。

念のため言っておくけれど、私は55歳のおばさんの中のおばさんであり、かわいい要素は微塵もない。

だから、息子(12歳)が心配なのだ。

 

ついこの間は、私が歯磨きしている途中で息子が帰ってきたので

口の周りを泡だらけにしたまま

「おかふぇりー」

と玄関ドアを開けたら、その顔を見るなり

「お母さん、かわいいー!」と叫んでいた。

 

「存在自体がかわいい」

「何をしていてもかわいい」

と言うので、きっと「かわいい」の意味をはき違えているのだと思って

「かわいいって、どういう意味で使ってる?」と聞いてみても

「かわいいはかわいいだよー」

と、釈然としない答えが返ってくる。

じゃあ、こんな顔でも? こんな顔は? と

次々変顔を繰り出すも

「かわいい」

「それもかわいい」

となかなか挫けない。

 

もしかしたら欲しいものがあるのかもしれない。

いや、言いづらいことがあるのかも。

それで

「ねぇねぇ、何か欲しいものがあるの?」とか

「お母さんに言いたいことがあるんじゃない?」

と聞いてみるも

「いや、別にないけど」と言う。

 

「かわいいー!」と言っている時の息子の目をじっと見る。

そこには一点の曇りもない純真な瞳があるだけだ。

これはもう、あれだ。

期間限定の魔法。魔法がかかっているに違いない。

あぁ、どこの魔女だか存じませんが、かけてくれてありがとう。

期間限定でも、こんなにかわいいかわいい言われるのは

人生でこれが最後だし(今までもなかったけども)

しかも息子から言われるなんて最高です!

この魔法に 心底感謝いたします!

 

でもいつか、憑き物が落ちたように

はっと我にかえるその時が怖いなあ。

いっそのこと、魔法が解ける日時がわかっている方が気が楽かも。

この日の真夜中の12時まで、とかね。

私に魔法がかかったわけでもないのに

なんだかシンデレラになった気分。

 

そして、残るのは

こういう魔法にかかっちゃう男の子って

割といるんだろうか?

という素朴な疑問。

もう、どっちでもいいかな。

今はこの、甘い時間に酔いしれよう。