昔、くじらぐもにのりたかった

暮らしとインテリアと、時々雑談

夕方、妄想散歩

家の中に 余計なものはあんまりないだろう

そう思っていたけれど

引き出しや扉をあちこち開けて回って

ていねいに点検したら 意外と出てきた。

洋服、下着、タオル、靴、書類、雑誌、…。

最終的に ごみ袋5つ分くらいの不要品。

ひえー。

それらをせっせとリサイクルショップに持ち込んだり、ウエスにしたり、

ゴミとして出したりして、最高に清々した気分になった。

 

その余韻を残したまま、雨上がりに散歩をした。

ひんやりした空気は 適度に湿気を含んで気持ちいい。

この辺りは 並木道が多い割にはイチョウの木が少ない。

紅葉したイチョウを眺めたくて、このところよく通る道。

(もう少ししたらあの匂いが…)

 

日も暮れはじめる時分に 住宅街にさしかかる。

どこからともなく 夕げの支度のかおりがする。

大根を炊いてるのと、焼き魚はすぐわかる。

それから、衣の揚がる香ばしいのは堪らなく。

にんにくは言わずもがな。

決まってお腹がぐーと鳴る。

 

こうして鼻先をあっちの台所、こっちの台所に向けて

クンクンさせながら歩いていると

私はいつの間にか おかっぱ頭の小学生に戻っている。

くたくたになるまで遊んで

夕日に背中を押されながら 家路を急ぐ。

そして 玄関に駆け込むなり叫ぶのだ。

「お母さん、ただいまー。今日の夕飯、なあに?」

こんな風に、もう一度言えたらいいのに

なんて思ったところで すうっとまた いつもの私にかえる。

 

またしばらく歩くと この時間決まって

子どもたちがお風呂に入っている家に辿り着く。

窓はひときわ明るくて

チャッポン ザブーン とお湯の音がする。

シャンプーか何かのいい香りと

男の子たちのエコーがかかった元気な声が漏れてくる。

時々は お父さんの声もする。

湯気で満たされた その輝く直方体は実は小さな惑星で

私が通り過ぎると

みるみるうちに 夜空に吸い込まれ

昼間も空のどこかで瞬いているんじゃないだろうか。 

宇宙の彼方で 子どもたちの声が響いているんじゃないだろうか。

お風呂の家の前を歩くと なぜだか

こんな不思議な考えが浮かんでくる。

 

夕方の散歩は 見知らぬ人々の営みがすぐそばにある。

それに想像力をかき立てられたり

癒されたりすることもあれば

寂しくて 切なくなることもある。

どんな気持ちになるかは 歩いてみないとわからない。

 

来週は晴れの日が続きそうだ。

そして 気温も徐々に下がっていくらしい。

あっという間に 年の瀬になりそうだ。

 

さてと今日は、そうだ鍋にしよう。