綿棒
バナナ
あんこ
平日お昼過ぎのドラッグストアは、空いていて好きだ。メモを片手にゆっくり店内を回遊する。
歯磨き粉、もうすぐ終わりそうだったな。
あ、甘口カレーもついでに買っておこう。
あった! 四角い容器に入ったあんこ。これは朝、あんバタートーストにするとき欠かせないのだけど、四角い容器に入ってるのはここか、少し遠くのスーパーでしか見かけないんだよね。タッパーに移しかえる手間が省けるから、これがいいんだ。よかった、よかった。わたしの独断で、こしあんゲット!
買い物袋をぶら下げて帰る。桜の木の根がアスファルトを持ち上げて、そのひび割れたところに、たんぽぽが咲いている。
こんな、ありきたりで平凡な日々が続くことを願う。ただそれだけなのに、人とぶつかったり、組織に押しつぶされそうになったり、弱い自分に嫌気がさしたりして、うまく生きられていないと感じる。でもそんなとき、自分を責めてはダメだと思う。自分を否定してはいけない。命を落としたり、精神を病んでまで、続けなくちゃいけない関係なんてない。続けなくちゃいけない仕事なんてない…と思う。
わたしは少しの間ブレイクをとって、家から離れた。それが根本的な解決に繋がらなくても、必要なら離れたらいい。そう思ったからだ。離れたからといって、無理に自分を回復させようとは思わない。戻ったからといって、すべてを飲み込んだわけでもない。でもやっぱり、必要な時間だったと思う。
これから先のことは、どうなるかわからない。けれどそれは、誰だって同じじゃないか。ただ、明るい方へ明るい方へと歩いていきたい。どっちに進んだらいいかきちんと選びたいから、自分を見失わないように生きたいと、そう思うのだ。
それにしても、家出ってなんか暗いイメージだよなぁ。他に気の利いた言い方はないものか。前向きな家出だってあるのだから。
「ただいま!」
誰もいないけど、元気に言ってみた。
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