昔、くじらぐもにのりたかった

暮らしとインテリアと、時々雑談

北欧に嫉妬した

私が暮らしにまつわることが大好きになったきっかけ。

それを考えるとき、真っ先に思い浮かぶのは

北欧を旅したことです。

 

旅日誌によれば、2002年9月3日~11日の間に

夫とふたりで デンマークスウェーデンを旅しています。

 

この頃の旅のスタイルは、世界遺産や有名な建築を訪れながら

道すがら 偶然に出会う住宅を探訪するというものでした。

世界的に有名な建築を目の前にしたときの 興奮や感動は

言うまでもありませんが、何より私たちが心躍ったのは

そこに暮らす人々が住む、名もない住宅を眺めているときでした。

当時の写真を見ても、一般住宅の写真のほうが断然多いです。(笑)

 

街並みの美しさはもちろんのこと、すこし落ちついて細部を眺めてみますと

窓の美しさには目を見張るものがありました。

当時撮影した写真をいくつか紹介します。

 


外壁の色とカラーコーディネートされていて、形状もさまざま。

窓そのものが、家の顔だと感じました。

窓辺はカーテンや雑貨、植物で飾られ、夜になればやわらかな光が漏れて

それもまた素敵です。

 

そして旅の途中 あちこちで見かけたのは

窓ガラスを丁寧に磨く住人の姿。

北欧は暗い時期が長いから 少しでも窓辺を明るく

というのもあるでしょうが この時はまだ9月。

窓は 北欧の人々にとって いつでも大切なものなのだろう

と思ったのでした。

 

旅日誌には 窓辺についてこんなことが…。

 “   窓辺はどれも個性がいっぱい。そこに住む人の暮らしの一端を

  垣間見るようで 興味深くひとつひとつ眺める。(中略)

       道行く人を意識しながらも 自分の窓辺であることを忘れていない。“

 

この頃から 窓ガラスやサッシ周りは

まめに掃除するようになりました。

あのとき見た素敵な窓そのものは持って帰れなくても

北欧の人々の精神は いつか自分のものにできると思ったからでした。

 

さて、いま一度旅日誌に目を戻しますと

こう書いてあります。

 “デンマークの人は リラックスするのが上手。街には至るところに

 広場や公園がある。ベンチの数もとっても多い。

 カフェでコーヒーを買って 芝生にブランケットをさっと広げて 

 たちまちくつろぎの場所をつくってしまう。

 おしゃべりしたり 読書したり ただぼんやりしていたり。

 思い思いの過ごし方。楽しむのが上手いし、慣れている………”

 

確かにそうでした。

また そういうシーンは、街の中だけでなく 

庭のちょっとした木陰やバルコニーでも見かけました。

小さなテーブルと椅子さえあれば そこはもう

ダイニングにもリビングにもなるのだと。

目から鱗でした。

楽しむのに広さなんて関係ないよ

その頃の私は 今と変わらずインテリア好きではありましたが
暮らしを愛していたかと言えば そうではなかったかもしれません。

楽しみは 家の外にある。

そんなふうに思っていた気がします。

だからでしょうか。 

暮らしを自然に楽しむ北欧の人々の姿を目の当たりにして

私は 北欧に恋ではなく 嫉妬してしまいました。(笑)

この旅は 甘美な時間と一緒に

言いようのない焦りと 憧れと 嫉妬とが

綯交ぜになった感情を 私にくれたのでした。

 

他にも 照明について考えを深めるきっかけや



家と植栽との関係について考えるきっかけも もらいました。

 

あれから 22年近くの歳月が過ぎました。

当時の私が 今の私の暮らしを見てどう思うかは

わかりませんが、暮らしの中に楽しみを見つけたい

と思う気持ちは いまなお継続中。

ときには なんにもしたくない 一日中寝ていたい

なんて日もありますが それもまた私、暮らしの一部なんだなあ。

 

すぅっと通り過ぎてしまうこともあれば

ひょいと つかまえることもできる。

与えられるものではなく 見つけるもの。

それが 暮らしの楽しみなんだと思います。

 

北欧旅のお土産。いろんな色の日があるから 人生はカラフルになるんだな。