乾いた硯に数滴の水を落とす
静かにゆっくりと墨を磨り始める
続けていくと、墨の香りがふっと鼻に届く瞬間があります。
磨りながら心はとうに落ち着いていたはずなのに…
墨の香りを感じると、浮ついていた魂が在るべきところにすっと納まるような感覚があります。そして香りに包まれながら、まっさらな紙を前に心まで無垢になったような、そんな心持ちになるのです。
字を書くことが好きで、仕事関連の挨拶状やお礼状はいまだに手書き(ペン字)です。
数が多くなると印刷してしまおうかとも思うのですが、手書きであるゆえ先様には印象に残るようで、そうなるともう後には引けません(笑)
今日は久々に、かな文字を書いてみました。
お気に入りの文鎮。力が入って、筆が思うように回りませんでした。
練習用には、とっておいた紙の端切れを使ったり…
こんな美しい紙もあるのです。これは「紙研」さんの料紙。
これに書くのはもっと上達してから…
紙の擦れる音や手触りにも癒されます。それから匂いにも。
(古い本の香りが特に好きですが、わかる方いるでしょうか?)
実は昨年から、書道を封印していました。のめり込むと寝食を忘れるタイプなので、家事や仕事、受験生のサポートもある身としては、書道は危険です(笑)
でも久しぶりに墨の香りに包まれて、とても幸せでした。
こんなふうに味わい深い時間を持つのはやっぱりいい。
余裕がない時こそ、筆をとってみる。
心は潤いを取り戻して、きっと自分の力になってくれる。
そう思えた午後でした。