その時々で、微笑んでいるようにも憂いているようにも見える。
この像を眺めるたび、彼女を想う。彼女には、後悔などないのだろうかと。
2007年のBunkamura ザ・ミュージアムの「モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」。
ジャンヌはモディリアーニの絵のモデルであったが、彼女自身もまた才能あふれる画家だったと、この時知った。
貧しい結婚生活のなか、彼が酒や麻薬に溺れても見捨てなかった。なぜこんなにも愛せるのか。私がモディリアーニの作品に惹かれるのは、彼女の人生が彼と彼の作品と共にあったからかもしれない。
モディリアーニが亡くなった翌日、彼女はアパルトマンの窓から身を投げ、後を追った。21年の人生だった。
2007年12月、パリ20区。
私は、二人が眠るペール・ラシェーズ墓地にいた。墓石は目立たず、辿り着くまでに少し探した。二人を見つけたとき、安堵と寂寥とが入り混じったような、なんとも言えない感情で胸がいっぱいになったのを覚えている。
私は墓石にそっと触れた。12月の冬空のせいか、身を切るような冷たさが指先から伝わった。
あれから15年以上経っても、ずっと悔やんでいることがある。それは花を手向けなかったことだ。こんなに引きずるとは思わなかった。でもこの後悔はもしかしたら、もう一度パリに行くための自己暗示なのかも、とも思っている。
今度は、こんなうららかな日に、きれいな花束を持って会いにいきたい…そう思う。
※構成を変更し、改題いたしました。